HSP(繊細さん)かもしれない、気を使いすぎて疲れるとき
打ち合わせは三十分で終わったのに、そのあと二時間なにもできない。飲み会から帰って、玄関で座り込んだまましばらく動けない。楽しくなかったわけではないんです。むしろちゃんと笑っていたし、場もうまく回した。それなのに、一人になった瞬間に電池が切れます。
そして寝る前に、今日の自分の発言をひとつずつ確認しはじめます。あの言い方は冷たかったかな。あのとき黙ったのは感じが悪かったかな。まわりからは「気にしすぎ」と言われるけれど、気にしないやり方がそもそも分かりません。
HSPは病名ではありません
最初にここを押さえておきます。HSPは診断名ではなく、刺激の受け取り方が人より細かいタイプを指す心理学の言葉です。病院で検査して出てくるものでもありません。
つまり「直す」対象ではないということです。五人に一人くらいはこのタイプだと言われていて、性格の欠陥ではなく、感度の設定が最初から高い、というだけの話です。ただ、その設定のまま気を使い続ければ、確実に消耗します。問題は繊細さそのものではなく、消耗の量のほうです。
内向的なのとは少し違います
静かなのが好きなことと、刺激で疲れることは別です。実際、人前で明るくふるまえる人、初対面でも場を回せる人にもこのタイプはいます。外では平気に見えるぶん、帰ってからの落ち方が大きいだけです。
だから「人見知りではないから自分は違う」と思って通り過ぎてしまう人がけっこういます。分かれ目は、人といる最中ではなく、そのあとに何時間かかるかのほうです。
当てはまるか、見てみてください
ここ半年くらいを思い出しながら、当てはまるものだけ数えてみてください。
- 人と会ったあと、一人で回復する時間がどうしても必要になる
- 相手の声のトーンや表情の変化に、まわりより早く気づく
- 怒られている人が近くにいると、自分のことでなくても消耗する
- 大きな音、まぶしい照明、人混みが苦手で、長くいると頭が重くなる
- 急に予定を変えられると、内容より変わったこと自体でぐったりする
- 一度に複数のことを見られていると、実力が出せない
- 人の頼みを断れず、引き受けてから後悔する
- 映画や音楽、景色で人より深く動かされることがある
- 空腹や寝不足の影響が、まわりより極端に出る
- 細かいミスや違和感によく気づくが、指摘するかどうかで毎回迷う
- カフェインやお酒の影響が強く出る
- 子どものころ「気にしすぎ」「神経質」と言われた記憶がある
半分以上当てはまるなら、このタイプの可能性が高いです。ただし、これはあくまで自分の傾向を知るための目安です。眠れない日が続いている、気分が落ちたまま戻らない、といった状態があるなら、それはタイプの話とは別なので、下の相談先のほうを見てください。
日本だと、とくに消耗しやすい
このタイプの人が日本で疲れやすいのには、はっきりした理由があります。言われる前に察することが前提になっている場面が多いからです。
- 会議で誰も言わない空気を、自分だけ先に読み取ってしまう
- 返信の速さや文面のやわらかさで、相手の機嫌を測ろうとしてしまう
- 満員電車、仕切りのないオフィス、長い飲み会。刺激から逃げる場所がない
- 「察してくれる人」として扱われ、気づいたぶんだけ頼まれごとが増える
- 断ると角が立つ空気があり、引き受けるほうが早いと学習してしまう
感度が高いこと自体は、環境によっては強みになります。ただ、察する量が多い場所に長くいると、その強みがそのまま消耗に変わります。
今日からできること
性格を変える話ではありません。入ってくる量と、抜く時間を調整する話です。
- 予定と予定のあいだを空ける。人と会う約束を一日に二つ以上入れないだけで、体感がかなり変わります。回復の時間は、おまけではなく予定の一部です
- 刺激そのものを減らす。ノイズキャンセリングのイヤホン、照明を一段落とす、通知を切る。気の持ちようより、こちらのほうが早く効きます
- 帰ってからの三十分を先に確保しておく。帰宅後すぐにスマホを開くと、回復しないまま次の刺激が入ります。先に静かな三十分を置くと、夜の反省会が短くなります
- 断る言い方をひとつだけ決めておく。「その日は難しいです、来週なら」。毎回考えるから断れないので、文章を一つ用意しておくだけで通ります
- その場で答えない。「少し考えて、夕方までにお返事します」と言えるようにしておく。即答を求められる場面がいちばん消耗します
- 寝る前の反省会に終わりをつくる。思い出したことを三行だけ書いて閉じる。頭の中だけで回すと、何時間でも続きます
- 空腹と寝不足を放置しない。このタイプは、体の状態がそのまま気分に出ます。順番としては、考え方より先にこちらです
かえって消耗が増えること
- 鈍感になろうとする。感度は訓練で下げられません。気づいていることに気づかないふりをするぶん、二重に疲れます
- 「気にしすぎ」と言われて直そうとする。直すものではないので、直らないたびに自分を責めることになります
- 予定を詰めて慣れようとする。慣れではなく、ただ消耗が積み上がります
- お酒で場をしのぐ。その日は楽になりますが、翌日の落ち込みが確実に大きくなります
- 全部ひとりで引き受ける。よく気づくので任されやすく、気づけば一番多く抱えている、という形になりがちです
ひとりで抱えないほうがいいとき
繊細であることと、生活が止まってしまうことは別です。次のような状態が二週間以上続いているなら、タイプの問題として片づけないほうがいいです。
- 眠れない日が続いている、または一日中横になってしまう
- 仕事や学校を休むことが増えた
- 人と会う予定を、ほとんど全部避けるようになった
- 気分が落ちたまま戻らない
- 自分がいなくなったほうがいい、という考えがよぎる
夜になると考えが止まらなくて眠れないなら「夜になると考えすぎて眠れないのはなぜか」、人といること自体が重くなっているなら「人づきあいに疲れてしまったとき」のほうも読んでみてください。最後の項目がよぎったことがあるなら、下の相談先は年中つながります。
話す相手が見つからないとき
この話は、まわりに言いにくいところがあります。自分から「繊細で」と言うと弱さの申告のように聞こえそうで、結局なんでもない顔をしてしまう。そして家に帰って、言えなかったぶんをまた一人で回します。
気づく量が多いのは、もともとそういう受け取り方をしているからです。減らしたほうがいいのは感じる力ではなく、それを誰にも渡せないまま抱えている時間のほうです。
ひとりで抱えてきたことがあるなら、名前を出さずに書いてみるのもひとつの方法です。
つらさが続くときは、ひとりで抱えないでください。
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